EPSON PC-386LS 内蔵バックアップ電池 改造

内蔵バックアップ電池の改造です。

古い旧98系は年数も相当経ってますので、内蔵バックアップ電池も老朽化しております。
現在は、リチウムや水銀電池が主流ですが、当時はNi-Cd(ニッカド)電池が主流でした。

バックアップ電池は、「メモリスイッチ」「内蔵タイマー(カレンダー)」を記憶するための電池で、これが不良になりますと、当然ながら、起動のたびにメモリスイッチの再設定及び日時の設定をしなければなりません。

日時が狂うことは大きな障害ではありませんが、メモリスイッチは弊害が大きいです。
運が悪いと、通信速度、グラフィック、クロックなどの値が滅茶苦茶なせいか、起動すらできないことがあります。
これも「メモリスイッチの初期化=ON」にすれば回避できるのですが・・・

弊社では、これら旧PC(世間ではビンテージパソコンとも言われている)もまだまだ保守として現役です。
特にラップトップやノートは、移動可能ですので、貴重なマシンです。

ということで、今回は、思いきってバックアップ電池の改造に挑戦してみました。
モルモットは、セイコーエプソンの「EPSON PC-386LS」です。

解体及び改造を実施する場合は、あくまで自己責任でお願いします。
弊社は一切の責任を持ちません、あしからず。


1.PC-386LSを解体する

PC-386LSを解体した状態 PC-386LSをバックアップ電池が見える状態まで解体します。
Tips「PC-286LS/PC-386LS解体新書」を参照して下さい。

内蔵バックアップNi-Cd電池 黄色い単三電池のようなものが「内蔵バックアップNi-Cd電池」です。
この電池は、実は小さなNi-Cd電池が3個、直列に接続されています。そのため、単三よりも3mmほど短く、単四よりも長くなっています。
また、タグ付き(端子タグが溶接されている)で、基板にはんだ付けされています。

バックアップ電池については、マニュアルに仕様が記載されていませんが、見た目は、PC-286L(LSではない)のバックアップ電池とそっくりです。
そこで、PC-286L のマニュアルを参考にしますと、3.6V/45mAH とありますので、PC-386LS の電池も似たようなものだと思います。

この状態で電圧を測ってみますと 2.64V しかありません。
※事前に、充分な充電時間を与えた結果です。

他の PC-286LS や PC-286L/LE は、初期日時になってしまうのですが、この PC-386LS は、電源ON時は、前回電源OFFした日時を記憶していました。かろうじて寿命の一歩手前という状態でしょうか。
ニッカドは、0.9V で約90%放電している状態らしいので、
     2.7=0.9×3
計算とおりですね。

2.電源ユニットとNi-Cd電池の確認

電源ユニットを取り付けた状態 先ず、電源ユニットのみを取り付けて、電源ユニットが正常であることを確認します。
PC-386LS は、電源ON時に充電する仕様です。
本来なら、電源ON時に電圧がかかるはずです。もし、電源ON時に電圧がかからなければ、電源ユニットの不良も考えられます。


ニッカド電池1個の規格は、普通 1.2V です。
3個が直結されているということは、3.6V と予想されます。
前述しましたとおり、PC-286L と同じものと思われます。

ニッカド電池を充電するには、1.2倍以上の電圧が必要です。同じ電圧以下ですと、充電できません。

では、実際に電源ONにして測定して確認してみましょう。
電圧は 4.98V ありました。
     1.4≒4.98÷3.6
予想とおりの値です。

もし、特殊な規格で1個 1.5V だった場合、
     1.1≒4.98÷4.5
となり、ちょっと電圧不足ですから 1.5V の特殊タイプとは思えません。

次に、PC-386LS のマニュアルによれば、本体の電源ON時に充電がなされ、完全放電の状態から50時間で充電完了となります。
50時間もかかることから、「標準充電」ではなく「トリクル充電」していると考えられます。
     トリクル充電
         自己放電を補うために、電池容量の 2 〜 5%程度の微弱電流で
         連続充電する方法


通常の充電は、電池容量の1.5倍の電荷(1.5C)を与えた時点で終了させます。
これを元に、充電電流 I を算出してみます。
     1.5C÷I[mA]=50[H]
     1.5×45[mAH]÷I[mA]=50[H]
       ∴ I=1.35[mA](45mAH の 3%)

以上の結果から、バックアップ電池は 3.6V/45mAH と判断しました。

3.材料と工具

材料 材料
同じNi-Cd電池があれば、取り替えるだけで済みますが、前述のとおり特殊な形状ですので、手に入りません。

今回は市販のNi-Cd電池(1.2V 3本)を代用しました。
容量は、ノートのバッテリーとは用途が異なりますので、1700mAH などの大容量でなくても充分です。
しかし、今の時代、逆に小容量のものを探すのが困難になってきました。できるだけ 45mAH に近いものを用意します。
※欲張って大容量のものをつけても充電不足になってしまいます。
決して、リチウム電池を使用してはいけません。電池特性が異なりますので充電時は大変危険です。

    1)Ni-Cd電池(乾電池型単三タイプ) 小容量 3本
    2)電池ホルダーとスナップ
    3)線材(必要に応じて)
    4)はんだごて
    5)はんだごて台
    6)はんだ
    7)はんだ吸取り器等

4.Ni-Cd電池の取り外し

基板の裏面 基板の裏の赤丸2ヶ所が電池のラグ端子(足)です。
周りの部品に注意しながら、はんだごてと吸取り器でNi-Cd電池を取り外します。
必ず取り外します。元の電池と改造電池を並列に接続してはいけません。

取り外したNi-Cd電池です。
Ni-Cd電池

5.スナップの取り付け

スナップ スナップを極性に注意しながらはんだ付けします。
スナップは電池ホルダーの取り付け位置に応じて、線材で延長して下さい。
PC-386LS の場合、下の画像のようにFDDの上に設置できますので、延長する必要がありませんでした。
この後、組み付けて行きます。

6.組み付け

電池ホルダーを取り付けた上体 電池ホルダーをFDDの上に両面テープで固定して取り付けた状態です。

後は、順次組み付けて完成です。

組み付け後、最初の電源ON時には「メモリスイッチの初期化=ON」にしておきます。
「メモリスイッチの初期化=OFF(保存する)」のままですと、一旦、バックアップ電池を取り外しておりますので、値が滅茶苦茶になっている可能性が大きいです。
そのまま起動しますと、HDやFDの内容が破壊されてしまうおそれもありますので、注意が必要です。


・・・お疲れ様でした。以上です。